とあるホテルのロビーにいた時のことです。
私から7~8mくらい離れたところに、若い男性がいました。
落ち着かないのか立ったり座ったりを繰り返し、私にも聞こえるくらいのため息をついています。
彼女とけんかでもしたのかな、と俗な想像をしていたら、その男性が私の目の前にきました。
「ちょっと、いいですか?」
「…はい」
「誰かに相談したくて」
「はい」
「友達と腹を割って話すには、どうしたらいいと思いますか」
意外なの、きた。
「難しいですよね、関係性にもよりますし」
「今日、友達と初めて旅行してるんですけど」
「はい」
「(言い淀む)」
話し出すのを待っていると、2人の男性がエレベーターを降りて、こちらに向かってくるのが見えました。
すぐそばまで来て、静かな口調で彼に話しかけます。
「○○(彼の名前)」
「…うん」
彼はこのまま一緒に帰るようです。
最後に私から、一言だけ伝えることにしました。
「頑張ってください」
「はい」
その短い会話を聞いて、彼の友人はなにがあったのか勘付いたようです。
しっかりと私の方に向き直り、
「ありがとうございました」と頭を下げて帰っていきました。
○○さん
あなたが思う「腹を割った」間柄がどういうものなのか、結局聞けずじまいでした。
でも、いざこざがあったのに迎えに来てくれて、友人のために他人に頭を下げてくれる。
そんな友達、誰にでもいるわけじゃない。
そんな友達がいるあなたは、すごく幸運です。
ずっと先、彼らが「昔、金沢でこんなことあったよな」って笑いあっていてほしい。
友達との初めての旅行が思い出せないくらいの大人ですが、そう祈ってます。
