突然、マンションの管理会社から電話がありました。

なんだろう、と訝りながら出たら
管理組合の役員になってほしい、との依頼でした。

とうとう、きましたか。

一度、経験しておきたい気持ちはあります。
仕事の上でも役立つはずです。
ですが2ヵ月前に修繕積立金の大幅な増額が提案されていて、まだ決議されていない状況です。

修繕の実施までは難しい運営になりそう。
少し考えて、率直に伝えることにしました。

「そろそろ回ってくると覚悟はしてたんですけど」
「そうでしたか」
「ただ今回は、できれば遠慮させていただきたくて」
「なぜですか?」
「先日、修繕積立金の増額の話があったじゃないですか」
「はい」
「これから揉めますよね?矢面に立つには力不足だと思うんです」
「なるほど」

管理会社の担当者はしばらく考えて、打ち明けてくれました。

「多分、この2年でやっておかれた方がいいと思います」
「なぜそう思うんです?」
「実際に大規模修繕をするのは4年後の予定です」
「はい」
「その時の方が、大変です」

思わず笑ってしまいました。
本音で話してくれる担当者のようです。

「なるほど、今回の方が楽だと」
「私はそう思います」
「笑。じゃそれ、信じます」
「では、推薦させていただきますね」
「お願いします」

そうして、電話を切りました。

なんだろう、この心地よい敗北感。
ふと、「赤子の手をひねる」という慣用句が浮かびました。
いとも簡単にひねられてしまったようです。