「廃墟、行ったことあります?」
いつも行く美容院で、男性の美容師さんに聞かれました。
「暑いので短めのショートで」とオーダーした矢先のことでした。
「いえ、行ったことないです」
「僕、学生の頃けっこう行きました」
「廃墟に?」
「はい。小松とか加賀とかには、割とあるんですよ」
「つぶれたパチンコ屋さん、とかですか?」
「パチンコ屋はすぐに他のものに変わるので、廃墟になりにくいんです」
「なるほど」
廃墟になりやすい・なりにくい、という建物基準があるようです。
初めて知りました。
「怖かったのは、病院ですね」
「怖そうですね」
「大抵の廃墟はすでにガラスが割れてたりするんです。なのでそこから入ったりするんですけど、その病院は裏口のドアが開いてたんです」
「そんなことあります?」
「で、入ってみたんですよ。すいませーんって声かけて」
「ホラー映画の始まり方じゃないですか」
「怖いもの見たさ」という行為が理解できません。
怖いのなら見なきゃいいのに、と思っています。
「もう何年も前に閉院してるのにベッドとかもそのままで、人の気配がするんですよ」
「やだ、怖い」
「で、全部の階を見て回って、最後に屋上に出たんです」
「……」
「そしたら屋上に!」
「え?」
「洗濯物が干してあったんです!」
「え⁉」
「本当に人が住んでましたー」
「人の気配がしてたのは、本当に人が住んでたからでした」ってオチでした。
いや、誰もいない病院に人が住んでるとか、充分ホラーですけどね。
夏に怪談話が好まれるのは、怖さで血管が収縮して表面温度が下がるので、若干涼しく感じるからという説があります。
怪談が苦手な私は、エアコンで涼をとろうと思います。

